レポート報告 ハラスメント対策・防止のルールβ版の見直しの会 1
2024/12/12
レポート報告
ハラスメント対策・防止のルールβ版の見直しの会 1
2024/09/26 @stiffslack
当店では、2024年1月25に開催した「stiffslackにおけるハラスメント対策・防止のルールβ版を考える会」を経て、2024年3月20日に当店における「ハラスメント対策・防止のルールβ版」を公表しました。
「ハラスメント対策・防止のルールβ版」については、6ヶ月に一度のペースで定期的に振り返りや見直しを行う予定であり、ルールの公表から6ヶ月経過したことを踏まえて2024年9月26日に「ハラスメント対策・防止のルールβ版の見直しの会」を開催いたしました。
今回も引き続き、ジェンダー・セクシュアリティの専門家である堀あきこさん(関西学院大学教員)をお迎えして進行等をお願いいたしました。見直しの会の内容についてご報告いたします。
※【ご注意事項】※
本レポートには性暴力被害に関する記述が含まれており、本レポートをご覧いただくだけでも、フラッシュバックが起こったり、精神的緊張が高まったりする可能性があります。ご注意いただきつつ、ご関心のある方にご覧いただけますと幸いです。
今回の見直しの会は、下記のアジェンダで進行しました。
■アジェンダ
1 ルールの見直し
(1)運用報告
(2)これまでの振り返り
(3)運用フロー確認のためのケーススタディ
・グループごとのワーク
・グループごとの発表(意見の共有)
2 ワークショップ 「演者を守るために何ができるか」
・グループごとのワーク
・グループごとの発表(意見の共有)
1 ルールの運用報告
まず、当店の竹岡より、ルール公表後の運用状況についての報告を行いました。
運用について
2024年3月20日にルールを公表してから、2024年9月26日までに約60回のライブ及びイベントを実施しました。この間、ハラスメント報告フォーム(TEL、gmail、instagram、X、LINE)への相談報告はゼロでした。
上記については周知や運用について引き続き考えながらアップデートを続けて行きたいと考えています。
またルールの周知については、当店をご利用される方に説明を行い、出演に際してご質問をいただいた利用者様に対してはZOOM等にて現在の取り組みを説明しております。この活動は今後も引き続き続けていきます。
ルール運用にあたって感じたのは、現在はある程度固定されたスタッフでイベント等を実施していますが、今後の新規スタッフやピンポイントのアルバイトスタッフに対し、ルールの実施についてフォローをしていく必要性があるということです。この点については今回のような振り返りの会のタイミング毎に簡易的なフローのアップデート、マニュアルの作成を進めていくようにしたいと考えています。
運用の中での気づいた点
ハラスメント報告はゼロだったのですが、とある音楽教室の発表会にご利用いただいた際に、イベント開催者様から予め入場禁止者のリストを預かり、利用者様、当店スタッフと共に情報を共有して当日のイベントを迎えたことがありました。
当日、当該入場禁止者は現れませんでしたが、リストの名前がSNS上でのニックネームであったり、実際の顔がわからなかったりすることもあり、もし入場されても特定が非常に難しいと感じました。実際に入場禁止として対応する際にはスタッフの動き方も想定するべきであること、すり抜けて入場してしまった場合も危険な状況が起きないような動きを改めて想定しておくことが必要と感じました。
2 これまでの振り返り
次に、堀さんからこれまでの振り返りをしていただきました。
第1回の内容については、下記のレポートをご覧ください。
https://www.stiffslack.com/news/202307/post-21.html
第2回の内容については、下記のレポートをご覧ください。
https://www.stiffslack.com/news/202311/2.html
第3回の内容については、下記のレポートをご覧ください。
https://www.stiffslack.com/news/202403/stiffslack.html
3 運用フロー確認のためのケーススタディ
いくつかのケースを素材に、参加者のみなさまにもスタッフとしてどのように行動するかを考えていただき、ルールの運用にあたってのフローを再検討しました。
設定されたケースは、下記のとおりです。
【ケース①】
A子がカウンターで飲み物を注文していたら、あまり親しくない人が、しつこく「奢るよ」と絡んできた。無視しても断ってもしつこい。いったん店の外に出て、SSのLINEに「カウンターで絡まれている」と連絡した。
【ケース②】
ライブ中、やたらと対人距離(パーソナルスペース)が近い人がいて、A子に顔を近づけて話してきたり、体を寄せてきたり、肩を軽く叩かれたりして、不快。離れても、また距離を詰められる。スタッフに「あの人、馴れ馴れしい」と言った。
【ケース③】
ライブ中、出演している女性のバンドメンバーに、ずっと「◯◯、かわいい~、付き合って~」「今日の格好セクシー」などと言っている客がいる。ずっと叫び続けていてMCも聞き取れない。周囲の人は笑っているので我慢していたが、他にも嫌そうな顔をしている観客を見たので、意を決して、ライブ終了後、スタッフに不快だったと話した。
【ケース④】
ライブ後、帰宅しようとしていた時、久しぶりにあった男性先輩から「打ち上げに行こう」と誘われ、腕を引っ張られる。断ってもしつこく誘ってきて、周囲も「おいでよ」ばかりで断りきれない。店は後片付けの時間で、こちらに気づいていないようだ。
■グループで議論を行うにあたってのグランドルールとしてこれまで同様、下記のルールが設定されました。
【グランドルール】
・人の意見を最後までしっかりと聞く。途中で遮ったり、自分の意見にこだわったり、否定的な表情や態度ではなく、尊重すること。
・発言する時は自分の考えや根拠を明確にする。感情的になったり、一方的に主張したりせず、相手が理解しやすいように話すことを心がける。
・無理して話さなくてもよい。沈黙はOK。
・ハラスメントに該当するような言動は絶対にしない。
・公平性を保つために、一人で長々と話し続けない。
・話した内容は秘密にする。参加者以外の人に漏らしたり、悪口や噂話にしたりしない。プライバシーを守る。
・この場所が「対等な関係」となっているか、注意する。
■各グループで議論した後に、各グループの発表の時間が設けられました。各グループの発表にていただいた主なご意見は以下の通りです。
グループ1
ケース:1
その場のムードや空気感により判断が場合によりけりなのでかなり難しいと思いました。
ただこのケースの場合、連絡した方が嫌だなと思った事は確かなので可能な範囲で情報を共有しながら対応できたらいいのかなと思いました。
また、お店の方や周りの人がやれることはそのような状況をみていてあげること、あまりにひどい場合は直接注意する、それが難しければ気を逸らすようなことができればと思いました。
グループ2
ケース:4
とても難しいケースだなと思って挑戦してこのケースを選びました。
まずお店側の立場になってこのケースを考えたのですが、男性側と女性側の関係性が最初にわからない。でも様子をみて明らかに嫌そうなら気を逸らすなり、注意をするという対処はできる気がする。しかし、お店の外側に出てこのケースが発生した場合は更に発見、対処が難しいと思いました。やれることを考えるとすれば近くで見かけた方が連絡するとか情報を共有するとかなのかなと思いました。
グループ3
ケース:2
この対処としてまず直接対話できれば一番良いと思いました。
ただそのような対処が難しそうな場合を考えるとスタッフであったり見ていた人が、話の輪に誘導したりしてまずその状況から離してあげることができたらよいのかもなと思いました。
グループ4
ケース:4
このグループはSSスタッフが2名も含まれるちょっと特殊なグループになっていますが、このグループではケース4について考えてみました。
このケースについて現状何ができてるかなという所から話は膨らんでいきまして、まずイベントの開始、演者の転換時、ライブ終演後などで騒音など複合的な要因はありますが利用者様の様子をみるようにしているという意見が出ました。
このアクション自体に諸々の様子を把握する効果、牽制する効果であったりを意識してやることはある程度の効果が見込めるのかなと思いました。
4 ワークショップ 「演者を守るために何ができるか」
当店のイベントに出演する演者から一部のファンから付きまとわれていて困っているという相談を受けた場合に、自分が当店のスタッフだったとしたら、どのような対応・対策を取ることができるのかについて、グループにわかれて当店が用意したルールの仮案を元にディスカッションと意見発表を行いました。
グループ1:
例として女性のシンガーソングライター等のお客様が演者様との距離が近く物販スペースでも話が長く、第三者目線から考えると違和感を感じる、しかし双方の関係性がわからないのでなかなか対処が難しい。
しかし、何かやれる事はないかと考えていくと、例えば演者様とお店スタッフとの関係性と信頼性
を構築した上であれば情報共有した上で干渉することはできるかもしれないという意見が出ました。
グループ2:
色々難しさは感じつつも他のお客様とかと演者が完全に別れる逃げ場があるといいんじゃないかと思いました。それはこのお店だったら楽屋だし、究極レジの内側の水場を使わせてもらう振りをしてひとまず状況から引き離せたらいいのかなと思いました。
グループ3:
こちらもグループ2と同じような考え方でお客様とかと演者が完全に別れる逃げ場があるといいという点は同じでまたその領域をお店と演者で認識を共有するとスタッフ等も気を配りやすいのかなと思いました。また事前に演者から事前にそのような情報をもらっておけたらより良いかもと思いました。
グループ4:
このグループでも様々な面において情報共有ができると良いと思いました。
やはり前のグループでもお話が出ていましたが関係性が見えない場合、雰囲気の把握に時間が
かかると思いました。そこも情報が共有できていると出待ちの対処等も手の打ちようもあるのかな
と思いました。
上記のようなご意見やアイデアをいただきました。
5 ルールβ版の見直しの会の所感(新川拓哉)
今回も進行を務めてくださいました堀あきこ先生、ご参加いただきました皆様、誠にありがとうございました。
ルール発足より、当店の主となるマネジメント及び運営を竹岡に移行し彼をと他のスタッフを中心に約半年間当店を運営して参りました。
それにより、自分自身に見えていなかった考え方や関わってくれるスタッフの意見が徐々に反映されてきており、僅か半年ではありますが小さくない変化がお店にもたらされていると感じ
ております。これは一重に当店スタッフだけでなく、当店をご利用くださる方々全てにより形作られていると思っております。前回、「セーファースペース」という考え方が今の自身や当店に本当に必要なことであると感じたと述べさせていただきましたが、今はより強く感じております。今後も考え続けアップデートをし続けていかねばと考えております。
また今回いただいたご意見を元に今後に生かして行ければと考えておりますので引き続き何卒よろしく
お願い申し上げます。
6 これまでの経緯
当店において、これまでのレクチャー・ワークショップ、ルールβ版を考える会、ルールβ版の公表、ルールβ版の見直しの会を開催するきっかけとなった経緯について、時系列にしたがって改めて整理いたします。
2021年12月6日:移転前の旧stiffslack店舗にて発生した当店代表新川によるハラスメント行為に言及したツイートが旧Twitter(現X)にて投稿される(以下、ツイート主様を「A様」といいます)。
2021年12月7日以降:新川から受けたハラスメント行為を告発するツイートがA様以外の複数アカウントより旧Twitter(現X)に投稿される。
2021年12月9日:当店旧Twitter(現X)アカウントより、ステートメントを発表。
2021年12月17日:上記ステートメントを撤回(以下、「撤回済みステートメント」といいます)。
2021年12月〜2022年4月:双方代理人間で協議を続ける。
2022年4月7日:A様の事前確認を経たうえでステートメントを最終版として発表。
2022年7月13日:読書会1回目
2022年8月2日:読書会2回目
2022年8月17日:読書会3回目
2022年8月30日:読書会4回目
2022年10月5日:上記読書会の開催方法を改める旨を発表。
2022年10月〜2023年6月:双方代理人間で協議を続ける。
2023年6月12日:レクチャー・ワークショップ第1回目
2023年8月23日:レクチャー・ワークショップ第2回目
2024年1月25日:stiffslackにおけるハラスメント対策・防止のルールβ版を考える会
2024年3月20日:ハラスメント対策・防止のルールβ版の公表
2024年9月26日:ハラスメント対策・防止のルールβ版の見直しの会
新川のハラスメント行為に対するA様の告発を契機として、A様以外の複数アカウントからも旧Twitter(現X)で過去の新川によるハラスメント行為を告発する投稿がなされました。これを受けて、新川は事態を早く収束させたいという気持ちが先行するあまり、撤回済みステートメントを発表しました。この撤回済みステートメントはA様の確認を経ずに出されたものであり、当該ステートメント自体が二次加害と呼べるようなものでした。その後、A様の代理人と協議をし、新たなステートメントを発表しました。新たなステートメントにおいて今後の改善策として読書会を開催し、当店のルールについて策定することをお約束しました。その後、読書会を何度か開催したものの、読書会の運営方法についての知識が不十分のままに開催してしまったこともあり、読書会の当初の開催目的を見失ってしまうような運営になってしまいました。このため、軌道修正を図るため、読書会ではなく別の方法を模索することになり、堀さんをお招きして、レクチャー・ワークショップを開催するということになりました。A様や他の複数のアカウントからのハラスメント行為の告発を受けて、新川は、当時の自身の認知の歪みやジェンダー等に関する意識の低さを認識・反省し、今後、当店を運営していくにあたって、より多くの人に開かれ、かつ安全に音楽を楽しんでもらえるようなお店づくりを行うために、当店のルールを策定し、運用を開始しております。
7 今後に関して
当店におけるルールのβ版を2024年3月20日に公表してから、当店では同ルールを元に当店の運営を実施しております。またstiffslack実店舗の責任者及び支配人が新川から竹岡に変更になり、店舗運営を継続しています。
ルールを公表して以降、おかげさまでいわゆるハラスメント事案と呼べる事象は報告されておりませんが、店舗の運営にあたって新たな気づきとなるケースも出てきています。
今後も当店でルールがきちんと運用されているのか、足りないルールはないのか、より良い運用方法はないのか、といった点について見直すべく議論を続けていければと考えております。
ルールβ版を踏まえた当店の運営に関して引き続きご関心を寄せていただけますと幸いです。