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PATROL Interview

2006/08/22

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■まず最初にメンバーの紹介をお願いします。
Doug Lorig(以下D):パトロールのメンバーは、僕、Doug Lorigがギターとボーカル、ギターのSkippy King、ベースのJake Reisenbichler、ドラムのEric Jungeだよ。

■続けてあなたが活動していたロードサイド・モニュメント(以下RM)の解散から現在のパトロール結成までの経緯を教えていただけますか?
D:RMが解散したのは、ベースのジョナサン・フォードが、シカゴに引っ越して、他の音楽性を追求したかったから。僕は、パードレ(Padre)とブラック・イーグル(Black Eagle)で手探りしていて、沢山ライヴをしてラフト・オブ・デッド・モンキーズ(Raft of Dead Monkeys)で2枚のレコードを作ったよ。2002年にラフトが解散すると、一時的にRMを再結成して、地元でライヴをしたり、ペドロ・ザ・ライオンと小さなツアーをした。RM再結成後、ビルディング・プレスにいたエリックと一緒に演奏しはじめて、何曲か書いて、ベース・プレイヤーを探し始めた。なかなか運に恵まれなかったから、スキッピーを捕まえて、ベースを弾くように説得したんだ。同じころ、ブラック・イーグルとパードレでベースを弾いていたジェイクがピース・コープス(Peace Corps:開発途上国を援助する米国政府のボランティア活動部隊)から戻ってきたから、スキッピーをギターに変えさせてジェイクをベースに入れ込んだ。何ヶ月間か練習して、ライヴを始めたんだよ。

■パトロール結成時に音楽的な方向性はあったのですか?
D:RMよりシンプルな曲を書きたいってことは分かっていた。最後のRMの曲はちょっと錯綜していたし。それでもRMと似ている部分はあると思うけど、余分な脂肪は削ぎ落とすことにしたよ。

■2枚のデモの発表を経て、遂に素晴らしいデビュー・アルバム『Destinations』が完成しましたね。率直な今のお気持ちはいかがですか?
D:いいふうに出来上がったと思うよ。もっと時間があったらと思うけど、自分たちで全てのやりくりしていたから、予算が許してくれなかったね。

■どのようにしてアルバムは制作されたのですか?
D:1年半かけて曲を作った。いろいろなバージョンを通過して、その形になったんだ。ソングライティングにとても時間がかかって、みんなすぐにはなかなか満足しないんだ。でも2ヶ月くらいしたら、パトロールの曲になっている。それについてはうまく説明できないけどね。

■ボトムがしっかりとしていて、2本のダウン・チューニング・ギターで攻めるへヴィでラウドなバンド・サウンドから、今まで忘れかけていた90年代のグランジ音楽を聴いて熱くなって込み上げる気持ちを思い出しました。これについてはどのように思いますか?
D:僕はシアトルで育って、古いグランジ・ミュージックは僕が音楽を始めたきっかけであるんだ。1989年にニルヴァーナとメルヴィンズの演奏を見て、僕がしたいことはコレだと知ることが出来たよ。その音楽のスピリットは、僕の意見とは未だに相容れないけどね。

■6曲目に自らのバンド名でもある「Patrol」という曲(この曲の終盤のツーバスに個人的にはしびれました!)がありますが、なぜバンド名を曲名に選んだのですか?結成当時にリリースしたデモにもこの曲が収録されていたということは、曲が最初にできていて、後からバンド名にしたのでしょうか?
D:この曲だけ、パトロールの曲用にしたRMの新しい曲だよ。2つのバンド間で大きく変化しているよ。今のは、随分シンプルだね。僕はこの曲のタイトルを気に入っていたから、バンド名にすることにしたんだ。バンド名に決まったから、「パトロール」って曲名をそのままにはしたくなかったけど、それにぴったりの名前が思い付かなかったんだ。

■歌詞はどのようなことをコンセプトにして書いていますか?
D:歌詞はハーモニーからくるんだ。ボーカル部分の歌詞を作っているとき、歌詞を書くというより先にバランスで作っている。誰も全く信じないのだけれど、面白い言葉やフレーズが曲になっているよ。僕は、きちんとしたトピックについて歌詞を書くような才能を授かっていない。曲についても同じことが言えて、座ってメロウな曲を書こうとしても出来ない。その逆もまた同様だよ。すべて自然に任せなければいけないんだ。

■この作品の録音は元マイナス・ザ・ベアのマット・ベイルスが担当していますね。彼は様々なバンドを手掛けていますが、彼との作業はいかがでしたか?
D:マットはグレートだよ。厳しいけどグレートだね。自分たち自身について沢山学んだよ。僕たちはしっかりしたバンドだと思っていたけど、まぁ、要は間違っていた。衝撃だったね。とても卑下したけど、いい意味でね。誰も僕たちを急き立てなかったから、最後にはうまくいったよ。それからはもっとしっかりした構成になっているね。マットは曲の長さや必要のない部分について、いくつか提案してくれたよ。彼の考えはそんなところで生かされているね。僕たちは、ただ彼を信頼する事に決めたんだ。

■この作品は日本からのリリース(USからは現在のところ未決定)が先ですね。USから遠く離れた日本からリリースされる経緯について教えてください。
D:スティッフ・スラック主宰のタクヤがRMのファンで、パトロールについて彼に話していた。彼に初期のデモを送って、それからはごらんの通りさ。USでレーベルを決めるのは、アルバムをレコーディングするまで待つって決めたんだ。今、いくつかのレーベルが興味を示しているよ。まだ何にも引き金は引いていないのだけれど。とはいえ、願わくば近いうちにね。

■このアルバムはとてもライヴ映えする楽曲が目白押しですね。レコードとライヴでの違いをどのように捉えていますか?
D:アルバムをレコーディングする時は、パーフェクトでならなければいけないし、終わらせなければならない。ライヴは、エネルギーと音量でリスナーを夢中にさせることが出来る。完璧でないのは重要ではないんだ。ライヴで演奏するのは僕のフェイバリットだね。

■ところで90年代はあなたが在籍していたRMをはじめ、ジョーボックス、ハム、ミネラル、ジャイアント・チェアなど後続に多大な影響を与えたバンドが数多く存在していたと思います。今改めてその頃を振り返ってみるといかがですか?
D:ここの90年代の音楽シーンは、うんと今とは違うね。人々は、もう少し心が広くて、偏見が無かったように思うよ。ロックはキングだったんだ。今は、ポップがキングだよね。ちょっと残念だよ。僕たちは、ほんの一握りのロック・バンドだよ。"Rock is dead"なんて全く信用しないけど、あー、ときどきそこに躍動があるかどうか考えてしまうよ。

■RMのときはまだエモやマス・ロックのカテゴリーも無かったと思うんですけど、そういったジャンルについてはどのように思いますか?
D:RMは、エモやマス・ロックなんて不名誉なものが起こる前に存在した。解散後に、集団の中の誰かのように、沢山のバンドとひと塊にされたんだ。僕自身は、僕たちは単に一つのロック・バンドだと思ってた。エモやマス・ロックについて、全く持論はないね。ただのラベルだよ。

■RMはレーベルTooth & Nail(以下T&N)からのリリースでしたが、その頃のT&Nはどうでしたか?今は全然違う商業ベースなレーベルだけど。フローダスもリリースしていたし。
D:RMが契約した頃、T&Nはちょうどうまくいき始めているところだった。MxPxがとても大きくなって、T&Nはそのシーンではモンスターになったんだ。T&Nは、素敵なスタジオでアルバムをレコーディングさせてくれたし、ツアーも可能で、経済的にも良い感じで助けてくれた。おそらく、僕たちにとって好ましいレーベルではなかったかもしれない。でも、彼らを批判するつもりは全くないよ。

■RMのジョナサン・フォードの今やっているUnwed Sailorはどう思いますか?新作も素晴らしいと思いましたが。
D:Unwed Sailorはいいね。実は、僕、この秋に彼らのヨーロッパ・ツアーでギターを弾くんだ。すごくエキサイティングだよ。一度も国から出たことがないんだ。いろいろ楽しいんだろうね。

■今のシアトル・シーンはどんな感じですか?ドラムのエリックがビルディング・プレス(The Building Press:レーベル、5440 Or Fight!からのリリースあり)に在籍していたのを最近知って嬉しかったんだけど。
D:ビルディング・プレスは素晴らしかった。シアトルにはちょっと違い過ぎたから、彼らを受け入れなかったけど。シアトルは、もっとシンプルな方へ向かっているんだ。ビルディング・プレスは、他の街の方がうまくいったかもしれないね。今、ギターのアーロンは、ニューヨークでビルディング・プレスをやっているよ。

■ギターはどんなチューニング方法を使っていますか?ギタープレーヤーとしてのこだわりなどは?
D:他のチューニングもあるんだけど、僕たちのギターは大体、DかBにチューニングしてある。僕はレスポールを弾いている。心地がいいという何ものでもないね。

■普段はどんな生活をしていますか?
D:シアトルに自分のビデオショップを持っているよ。凄く楽しいのと同時にストレスでもあるね。けど、今までで最も良い仕事だよ。

■最近のお気に入りのレコードは何ですか?
D:新しいトゥールのレコードを聴いているよ。新しいドン・キャバレロはグレートだ。それとスティーリー・ダンとかキャロル・キングのような70年代のソフト・ロックを良く聴いているよ。すごく好きだね。

■これからの活動を教えてください。
D:7月に日本でアルバムが発売になるはず。是非、日本にツアーに行きたいね。9月にUSで西海岸ツアーを予定している。秋には、USでレコードをリリースしたいよ。来年の春には、US全土でツアーが出来たらいいなと思っている。

■それでは最後にメッセージをお願いします!
D:近いうちに日本でツアーが出来るといいなと思っているよ。そしたら素晴らしいだろうね。ありがとう。

取材 : 星野真人
翻訳 : マチダキョウコ

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